†穢れなき小鳥の殺し方†

服を整えているのか、衣擦れの音が聞こえる。

すこし顔をずらして見えたのは、

いつもと変わらない彼女の後姿。


和香はジャケットを羽織り、マフラーを首に巻く。

それからカバンを持ち上げて、


こちらに振り返った。


「・・・・・・あの」


消えてしまいそうなほど小さな声。

なのに、和香の声は空気を振動させ俺の鼓膜に届いた。


「帰れよ」


和香が何かを言う前に俺はそう言い放った。

その声に、言葉を紡ごうとした唇はゆっくりと閉じられる。

そして、


「じゃあ・・・・・・」


和香は小さく頭を下げると部屋から出て行った。
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