名前の無い物語

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あと数メートル


「滝川ー!」

「頑張ってー!」

クラス全員で、一斉に送る滝川コール

今、クラスが…全校生徒が皆

存在が消されていた、一人の少年に釘付けだった


「…ハッ、ハッ…。」


苦しい
足が言うことを聞かない

酸素不足でガチガチの身体を無理矢理動かしながら
吉野は前だけを見て走っていた

あと…アイツを抜かせば…!

目標まで、もう一メートルも無い

はち切れそうな胸の痛みに耐えて
吉野は速度を上げる

すると…目の前に誰も居なくなった


「そのまま行けー滝川!」

「ゴールまであと少しだよー!」

必死に応援を送るクラスメート


「吉野っ!」

「頑張れっ!」

柚歌と海も吉野に声を上げる

グラウンドが熱気に包まれる


『ゴールっ!一着、1年5組!』



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