名前の無い物語
扉という名でも、本当にそんな形をしているとは限らない
只呆然と立っているこの女神像こそが、世界と世界を繋ぐ鍵
発せられる不思議な感覚から…それは容易に読み取れた
「ようやく…だな。」
空の言葉に、全員が一度深い息を吐く
やっとここまで来た
成り行きで始まったこの旅も
次の世界が…きっと最後
「あのさ。」
突然声を発したのは
吉野だった
「皆に…言いたい事があるんだ。」
三人は首を傾げる
記憶が戻ってから…ずっと考えていたこと
さっきの町でようやく決断できたこと
「鎖邊の狙いのオーバードライヴ…。博士はまだ、それを狙ってる。その為に、博士は…心を俺と黒蘭に分けたんだ。」
以前は俺の中にあった強大な心
それは今…俺と黒蘭の中に別れてまだ生きている
「純粋な光と闇の衝突…つまり、俺が黒蘭に飲み込まれれば…。」
「オーバードライヴが起こる、か?」
海の言葉に吉野は深く頷いた
「この先…俺は、きっと黒蘭と戦う事になる。
もし、俺が黒蘭に飲み込まれそうな…その時は
俺を、消してくれ。」