名前の無い物語
その音と共に、シャトルはようやく動きを止める
七菜の厚意で、能力を込めずにシャトルが動くようになってから
今初めて…動きが止まった
「…着いたか。」
場の空気が一気に変わる
さっきまでの和やかな雰囲気はもうどこにも無い
この先にある扉に向かえば…吉野の世界に辿り着く
そして、その先には…鎖邊が待っている
シャトルのドアがゆっくりと開いた
見えた光景は…一面の宇宙空間
「うわっ…!」
「綺麗…。」
上も下も右も左も
全部全部暗闇のなかで光輝く星達
道と言う道は無いみたいだが、どうやら目に見えない透明の通路があるらしく
吉野達はそのままシャトルから出て歩き出した
「これが全部、世界なんだな…。」
この中に、柚月や祐希達の世界もあるんだな…
どの辺りにあるんだろう?
吉野の頭の中に次々と思い起こされる記憶
旅の中で出会った
たくさんの人達
それぞれが
只懸命に…生きていた
「アレ。」
先頭を歩いていた海が何かに気づく
吉野達も視線を向けると、その先にあるのは
一体の女神の像
「あれが扉か…。」