亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
―――朝日が昇り、空を漂い、また、落ちていく。
地平線の彼方に、日が吸い込まれていく。
冷たい風が、音も無く吹き荒れていた。
髪を靡かせ、頬を撫でていく。
トウェインは帽子の鍔をきゅっと引き、深く被った。
………ああ。
………始まるのだ。
長い長い………夜が始まる。
歓喜に、指先が震える。
側で今か今かと構えているトゥラは、待ち切れない様に唸り続ける。
もうすぐだ。
もうすぐだから…。
今夜だけは………好きな様にしろ。
…夜がこれほど………愛しいとは。