亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
黒い衣を纏い、フードを深く被った少女は、杖を振った。
…その途端、鏡に映る映像がほんの少しだけ変わり、広大な荒野全体が眺められるものになった。
その荒野には、巨大な上半身だけの怪物が暴れ回っている。
「………あの化け物……少ない頭でよく考えるな。…………自らの血で……荒野全体に魔方陣を書いているのか………」
上空から見た荒野は、黒く、丸い簡素な魔方陣が描かれていた。
これは地上にいる者には分かるまい。この怪物が何をしているかなど。
「………空の魔石で魔力は残っていないんじゃなかったのか?」
「…………はい。ですが……魔方陣自体にも魔力はあります。しかもこれは………血で描いたもの。…………………威力は凄まじいかと………」
少年の問いに、少女はか細い声で少し怯えながら答えた。
ふーん…、と少年は、完成間近な魔方陣を眺めて、目を細める。
「…………魔方陣が発動したらどうなる?」
「………大地を司る魔獣ですので…………多分………この荒野全体の………………」
「―――!?」
意思とは無関係に、キーツは地に手と膝を突いた。
…握っていた剣が、異様に重い。
いや、それどころか…。
(……………身体が……………!?)
指一本上げられない程…………重い。
周りの空気が、重い。
身体全体に重りが伸し掛かったかの様に………………重…い。
「……………っ…………………!?………何が………」
立ち込めていた砂埃も、花吹雪も止んでいる。