亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――先発隊………前へ」
闇の淵を見据え、キーツは手を挙げた。
顔半分を覆う兜が、一斉に兵士達の殺気だった眼光を収める。
前へ。
前へ。
臆するな。
横一列の陣を組んだまま、兵士達は夕闇の中を前進した。
―――森の手前に並ぶシルエットは………誰一人動かない。
迫り来る敵をただ、傍観してくるのみ。
高い城壁の上に佇み、敵の様子を伺うリストは、顔をしかめる。
「………敵兵………微動だにしません」