亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「離れて。………下手すると巻き込まれるから」
………言われなくても、総員、無言で本能的に離れていた。
ダリルとルアが立つ場所には、囲む様に白と黒の細かい電流がピリピリと弧を描いて波打っていた。
空中を舞う砂埃や花びらは自分から避け、パラサイトまでもが寄り付こうとしない。
………術を発動している訳でもないのにはっきりと見える魔力。
…よっぽど強力で濃厚な魔力でなければこうは見えない。
ルアからは白い靄が、ダリルからは黒い靄が立ち上ぼっていた。
ダリルは前方の竜巻を見詰めながら、傍らのルアに囁いた。
「………チャンスは一回。…………失敗は許されないよ……。……………僕がまず、中のあの人の位置を正確に読み取る。…いい?……僕の力は一瞬しか保たないからね…」
ダリルはそっとルアの頭の角に触れた。
ピリッ…と、静電気に似た小さな痛みが指先を掠めた。
「…………僕が剣を投げたら……お前の魔力を直ぐに、剣に纏わせるんだよ。……剣が竜巻に触れる寸前に。………出来る……?」
ルアはコクンと頷き、元気よく一吠えした。
「………そう。………安心したよ…」
……ダリルはキーツの真っ黒な剣を抱え、いつでも直ぐに投げられる体勢で、ピタリと静止した。
………何も映していない盲目は、闇の中で……厚く大きな竜巻の内側を、ぼんやりと見透かしていった。