亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――食えよ………仲間の舌だ。……血腥いの…好きだろ?」

ジスカは笑っていた。…………………残忍な、笑みだった。



………恐れをなしたのか、ワイオーン達はほうほうの体で去って行った。


その時、火の囲いの内から自分の長い槍が弧を描いて降って来た。

ジスカは槍を上手くキャッチする。

「……お前ら遅えんだよ…」

ぶつぶつ呟いて、ジスカはトゥラの元に歩み寄る。

トゥラは傷だらけだった。噛まれたり、引っ掛かれたり、腹部には切られた様な跡もあった。

立っているのもやっとな筈なのに、トゥラは休まず動こうとする。

「………おいトゥラ……お前の御主人様御一行はどうした………トウェインは……?」

トゥラはジスカを一瞥し、ふっとある方向に視線を向けた。


―――丘の上の城。真っ白に輝く城だ。





「―――侵入成功ねぇ………やったじゃん」

トゥラを撫でようと手を伸ばすと、噛まれそうになった。



さて……侵入成功となれば、次の作戦に移らなければならない。

次の新たな合図と共に、第3部隊は戦場から一時抜けだし、城壁内の第4部隊と合流する手筈だ。



………しかし、今のこの状況では、俺一人だけ。
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