亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
11.一匹狼は走る
………変な……犬みたいな奴に気に入られたようだ。


いつもヘラヘラしていて、訓練中でも軽口を叩く不届きな奴。

………ちょっと前に声をかけて来た時、からかわれたと思って追い払ったが………それ以来よく話しかけて来る。


………一つ上のガキだ。


聞いてもないのに「俺はジスカだ。イカすだろ?」と勝手に名乗ってきた。


―――…イカす?スカの間違いだろ。

私はグラッゾ隊長が指揮する第6部隊で、奴は、遊び人とか言われているバレン隊長の第5部隊。

悲しいことに、この二つはよく合同訓練を行う。

だからあのスカの気違い野郎と嫌でも会う。


………しかし奴はこれはこれで結構出来る奴だった。

“闇溶け”は私と同じくすぐに出来る様になったし、型にはまらない戦術は並の兵士より卓越していた。


………ずっと話しかけてくるものだから、いつの間にか私も奴のペースに乗せられ、答えを返す様になっていた。


影の討伐も二人で組んで行ったりした。

練習で疲れた後、塔の最上階の屋根の上で、二人揃って寝そべったりした。

戯いもない話をするのが楽しかった。



―――こいつなら、私の背中を任せても良いかもしれない。


変な奴だが、結構良い奴だ。
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