亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「ぐずぐず言ってんじゃないよ。気持ち悪い。じゃあ実例を見せるから………目が合ったあんた、前に出て」

ビクビクしながら前に進み出る兵士。
隣りに立たせ、ダリルは再度兵士達に向き直った。

「………“闇溶け”の性質は分かってるよね?この軍服を媒体に、感覚で周りの濃い闇を引き寄せ、身体を細胞単位で同化させる。………これにはかなりの集中力が必要となる。下手に途切れたら元に戻れず死ぬ事もある。……………そして、本題の“闇入り”だけど………」

ダリルはすっと片手を上げ、隣りに佇む兵士の肩に手を置いた。









………ズブリ。














ダリルの手が、兵士の肩に深くめり込んだ。

「―――っ…!?」


兵士は見る見るうちに顔を真っ青にし、ガクガクと震え出した。


「分かるかな?“闇入り”っていうのは………自分とは違う異なる生体をも闇に引き摺りこむこと」


ごくり、と息を呑む音が辺りから聞こえた。

不可能だ。

ただでさえ自分の身体一つを消すのに集中力が要るというのに………全く異なる他の身体までも“闇溶け”をかけるというのだ。

………恐ろしい程の適応能力と集中力、そして習練が問われる。


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