亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
……潜入後…戦闘を避けて待機。………その行動の意味が理解出来ない。トウェインは怪訝な表情を向けた。

「………何故、待機なのですか?……そのまま一気に攻め落とす事は充分に可能ですが…」

出来る筈だ。
敵は、我ら第4部隊の存在をあまり知らない筈。
隙を伺えば…大将を討ち取る事だって…。

「―――トウェイン」

いつも以上に冷たい、全てを射抜く目。……真正面から見てしまった。

―――背筋に、言い知れぬ寒気が吹き抜けた。………ベルトークは……何故だか、酷く苛立っている。
………蛇に睨まれた蛙の状態だ。


「―――良いか………待機……だ。………何度も言わせるな……」


感情の無い冷静な声は、その場をぴりぴりとした嫌な空気に変えた。

……息の詰まりそうなこの異様な雰囲気に、ジスカは冷や汗を流しながら、地図に目を落としたままだ。

ゴーガンでさえ、だんまりを決め込んで素知らぬ顔をしている。


「………了解です……ベルトーク隊長…」

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