亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~













「―――本当に死にたくなったら私に言え。………いつでも、殺してやる」




































「―――…………変な人」

身に染みる冬の風が、髪を撫で、頬の温度をさらっていく。

塔の屋上の屋根の上は寒い。

沈黙の森の中に、真っ赤な夕日が沈んでいく。眩しい筈の陽光は、やはりダリルには分からない。

「―――この時期のって、沈むの早いなぁ……」

「空気が澄んでいて綺麗よね」

ダリルの前で、イブとマリアは夕日を前に佇んでいた。




この夕日は、あの時の朝日とどう違うのだろう。
眩しいのかな。
もっと濃い赤なのかな。
どれ位綺麗なのかな。



(…………どっちも…………綺麗なのかな)












リーダーのゼリアスはあの数日後、国家騎士団の者に捕らえられ、処刑されたらしい。

後から知った事だったが……バトラーは内通者だった。……何を考えていたのだろうか。組織の者全員が殺された後、彼は自殺した。

反国家組織は消滅した。





生きた武器を残して。












それからダリルは、理の能力を使う事は無かった。


絶対に使わない。
< 721 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop