亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――本当に死にたくなったら私に言え。………いつでも、殺してやる」
「―――…………変な人」
身に染みる冬の風が、髪を撫で、頬の温度をさらっていく。
塔の屋上の屋根の上は寒い。
沈黙の森の中に、真っ赤な夕日が沈んでいく。眩しい筈の陽光は、やはりダリルには分からない。
「―――この時期のって、沈むの早いなぁ……」
「空気が澄んでいて綺麗よね」
ダリルの前で、イブとマリアは夕日を前に佇んでいた。
この夕日は、あの時の朝日とどう違うのだろう。
眩しいのかな。
もっと濃い赤なのかな。
どれ位綺麗なのかな。
(…………どっちも…………綺麗なのかな)
リーダーのゼリアスはあの数日後、国家騎士団の者に捕らえられ、処刑されたらしい。
後から知った事だったが……バトラーは内通者だった。……何を考えていたのだろうか。組織の者全員が殺された後、彼は自殺した。
反国家組織は消滅した。
生きた武器を残して。
それからダリルは、理の能力を使う事は無かった。
絶対に使わない。