亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
暖かく、柔らかい風がいつも吹いて行く場所だった。
足下には……白い小さな花。
………見覚えのある花だ。
花弁をそっと撫でると、羽毛の様な感触が伝わってくる。
『―――』
誰かが呼んでいる。
私の名前を。
………『ローアン』と呼んでいる。
………花と違わぬ真っ白な身体のルアが、後ろから擦り寄って来た。
『ローアン』
………それは私?呼ばれているのは…私。
なびく髪を指先で掬いながら、声のする方へ振り返った。
……………私よりも背の高い……。
………よく…見えない。
………しかし…私を呼ぶその声は…酷く懐かしく………呼ばれただけで、嬉しさの様なものが込み上げて来て………。
……………貴方は…………誰………?
………………貴方は……。
「……………」
ぼんやりと見える視界の先に、ルアの鼻っ面があった。
トウェインが目を覚ましたと気付くや否や、千切れんばかりに尾を振る。