亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「そりゃあもっと面白い。……総団長、御指名入りましたよー。相手してやんな」
「………お、おい!?」
リストはキーツとローアンを行ったり来たりと見やる。
オーウェンは一人、口笛を吹きながら軽快な足取りで隅の方へ向かった。その壁に立て掛けていた数本の剣から一本を掴み、ローアンに向かって投げた。
…ガシャン、と音を立てて足元に落ちた剣。
「………あの………真剣でか……?」
「………当たり前だ。木剣など恥ずかしいだけだろう」
ローアンは剣の柄と地面の僅かな隙間にブーツの爪先を引っ掛け、軽く蹴り上げて剣を手に取った。
スラリと鞘から抜き出された剣先が、キーツに向けられた。
「………こうやって刃を交えるのはあの襲撃以来だな?……今回は“闇溶け”無しだ。……生身の人間同士、フェアにいこうか」
にやりと意地の悪い笑みを浮かべるローアン。
………キーツが困り果てるということを分かっていながら……。
………この女狐……確信犯だ。
いつの間にかオーウェンの元に下がっていたリストは内心でそう思った。
案の定、総団長殿は現在、混乱度マックスだ。そんな事などそっちのけで、ローアンは剣を構えたままにじり寄って来た。
「………どうした?……遠慮は要らんのだぞ。………相手がローアン姫では…手も足も出ないか?」
「…………止めてくれ……俺は……君に剣を向けるなど………」
「…聞いて呆れるわ!」
一気に距離は縮まった。
ローアンは女であり、やはり男よりも力は無いが、瞬発力や速さは並の兵士よりも卓越している。
「………お、おい!?」
リストはキーツとローアンを行ったり来たりと見やる。
オーウェンは一人、口笛を吹きながら軽快な足取りで隅の方へ向かった。その壁に立て掛けていた数本の剣から一本を掴み、ローアンに向かって投げた。
…ガシャン、と音を立てて足元に落ちた剣。
「………あの………真剣でか……?」
「………当たり前だ。木剣など恥ずかしいだけだろう」
ローアンは剣の柄と地面の僅かな隙間にブーツの爪先を引っ掛け、軽く蹴り上げて剣を手に取った。
スラリと鞘から抜き出された剣先が、キーツに向けられた。
「………こうやって刃を交えるのはあの襲撃以来だな?……今回は“闇溶け”無しだ。……生身の人間同士、フェアにいこうか」
にやりと意地の悪い笑みを浮かべるローアン。
………キーツが困り果てるということを分かっていながら……。
………この女狐……確信犯だ。
いつの間にかオーウェンの元に下がっていたリストは内心でそう思った。
案の定、総団長殿は現在、混乱度マックスだ。そんな事などそっちのけで、ローアンは剣を構えたままにじり寄って来た。
「………どうした?……遠慮は要らんのだぞ。………相手がローアン姫では…手も足も出ないか?」
「…………止めてくれ……俺は……君に剣を向けるなど………」
「…聞いて呆れるわ!」
一気に距離は縮まった。
ローアンは女であり、やはり男よりも力は無いが、瞬発力や速さは並の兵士よりも卓越している。