亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
生気の無い、ガラス玉の様な瞳。
憎悪しか、そこには無い。
純粋な悪意。
濁りのない完璧な悪魔。
返り血を浴びて垂れ下がった真っ白な髪。
血刀を握る垂れ下がった腕。
『―――…ゴーガン……あの子供を始末しろ』
悪魔の口が僅かに動いた。
配下らしい、黒髪の大きな男が、にじり寄って来た。
ああ………殺される。
足が竦んで動かない。
生きる気力さえ無くしたかの様に。
白い悪魔は王の間へ歩んで行く。
開け放たれた扉から、玉座がちらりと見えた。
―――冠を被った女王。
その腕の中に………あの子がいた。
涙を浮かべて震える少女に、ゆっくりと悪魔が近付いて行く。
―――嫌だ。
――嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ………