龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「仲直りはしたのよ。『やっぱり友達でいましょう』って」


それ、仲直りって言うの?


「でも、毎日迎えに来るようになって、困って、今日は早くに家を出て――」


「このバスに乗ったら僕がいたんで、延々とお悩み相談さ」

悟くんがため息をつく。

「いいかい? 本当に困るならはっきりと言ってやりなよ。『お友達』なんて生温いコト言ったら相手だって期待するだろ?」


「わ……分かった。明日こそはっきりと言う」


今日じゃないんだ


「最初から無理だったんだよね」

松本さんは小さく言った。

「わたしみたいに地味な女の子が手に負える相手じゃなかったのに、好きだって言われて舞い上がっちゃった」


「好きって言われたら誰だって舞い上がるよ」

悟くんは優しく言った。


「わたしの事だけが好きなんだって思い込んじゃって。カッコ悪い」


「ううん、カッコ悪くなんかない。当たり前よ」

わたしは松本さんに言った。


誰だって、好きな人の一番でいたいもの

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