龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「松本さんは分かってるわよ。でも、女の子にルーズなのは我慢できないって」

「だから、それも見せかけだってば!」

「どうして、そんなことしてるのよ」

「俺の勝手だろ!」


わたしはマフラーを掴んだ手をパッと離した。

長谷川くんがよろめく。


「じゃあ勝手にしなさいよ。好きな女の子を傷つけても平気なんでしょ。松本さんはね、あなたに好かれている自信がないのよ。あなたが本気だって言うなら、本気を見せてみなさいよ!」


この、バカ男っ!


長谷川くんは、うなだれてしまった。

図体ばかり大きいけど、一年生だものね。まだ子供っぽいんだ。

松本さんは呆気にとられたように、わたしと長谷川くんを見ている。


「松本加奈さん!」

長谷川くんがいきなり大声で言った。

「あなたが好きです! っていうかずっと前から好きだったんです。図書室で声をかけた時は心臓がバクバク言ってて、冷や汗も出て、付き合ってくれるって言われた時は嬉しくて泣きそうだった」


そうそう その調子よ


「でも俺、中学からずっと、ガリ勉って思われるのが嫌でチャラ男やってたから、その癖が抜けなくて――ごめんなさい! もう二度と、他の女の子とイチャついたりしない。だから……だから付き合って下さい!」

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