龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
我が心は変わる日なく

「今朝は絶好の名場面を見逃しましたぁ」

昼休みの学食で、いつもの席にやって来た美月が、いかにも無念そうに言う。


「何かあったの?」

わたしがそう言うと、美月は割り箸を口にくわえて割ってから、

「三田先輩のことですよ」

と言った。


わたし?


「うちのクラスのチャラ男の胸倉つかんで、一喝したんでしょう?」


それ違うから


「その後、大野先輩が『屠殺場送りになりたいの』って 啖呵を切ったって」


いや、それも違うから


「で、ハッセーは泣いて謝った」


泣いたけど泣かせた訳じゃないから


「すごい尾ヒレじゃない」

亜由美が笑った。

「それより美月、あんた割り箸手で割りなさいよ。オヤジくさい。美少女がだいなしだわ」


「美少女は何をやっても美少女なんです」


あー、自信持ってそう言えるあんたってすごいわ

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