龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
変な言い方

まるで、わたしが圭吾さんを好きじゃないみたい


「君を愛してるよ」


温かい手が、わたしの耳の後ろから下へ首筋を撫でる。


気持ちいい

猫が喉を鳴らす時って、こんな気持ちなのかな


「大好き」

わたしはつぶやくように言った。

「向こうで、何度も圭吾さんの夢を見たわ」


「僕も志鶴の夢を見たよ」


笑ってる?


「本当? どういうわけかね、すごい夢ばっかりだった」


「そう? 頑張ってはみたんだけど、お子様仕様にしかならなかったよ」


頑張った? 何を?


眠い

眠気の霧の向こうに何かが思い浮かんで消えた。


「志鶴?」

圭吾さんがわたしの髪を撫でる。


なぁに?

返事をしたけれど、自分の耳にも、意味を成さない寝言みたいに聞こえた。

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