龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】

「愛って何?」

放課後の図書室で、わたしは両手で頬杖をつきながら尋ねた。


「何? そんな哲学的な話がしたくて僕を呼び出したの?」

悟くんが怪訝そうに言った。


「そうじゃなくて、相談したかったの」


「何を? 君と圭吾が手にしているものが『愛』だと思うけど」


やっぱりそうよね


「でもね、圭吾さんを見ていると、わたしの気持ちって伝わっていない気がして」


「伝わっているだろ?」


そうなの? だとしたら……


わたしはハァーっとため息をついて、学習テーブルの上に両手を投げ出して突っ伏した。


「わたしの愛情が足りないんだわ」

「ねえ、話が見えないんだけど」

「圭吾さんはわたしじゃ不満なの」

「はぁ? 圭吾がそう言ったの?」

「圭吾さんはそんな事言わないわよ。優しいもの」


悟くんは疑わしげな表情を浮かべた。


「君に嫌われるのが怖くて、特大の猫を被ってるだけだよ」

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