龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「醤油ラーメンにしようかなぁ――なぁに?」

「お前がピザって言わないのは珍しいな」


ああ


「結構あっちで食べてるんだ。圭吾さんが学校の近くにお店を作ってくれたから」

「何だって?」

親父が素っ頓狂な声を上げた。


そうね、最初はわたしも驚いたわよ。


「宅配ピザ店だけど、店内でも食べられるスペースがあるの。友達とよく行くよ」

「やれやれ……」

親父がため息をつく。


どうして?


「何か変? そりゃあ、ちょっと行き過ぎなところもあるけど、圭吾さんがわたしを大切にしてくれてるって事でしょ?」


親父は少しためらってから口を開いた。

「父さんには、圭吾君が必死になってお前の機嫌を取っているように見えるよ」


「わたし、わがままなんて言っていないよ」

圭吾さんを喜ばせるために言うことはあるけど

「むくれたりもしない」


「それはよく分かっているよ。だが、心配なんだ。お前と圭吾君では気持ちに差がありすぎる」

< 7 / 125 >

この作品をシェア

pagetop