龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】

程なくわたし達と落ち合った圭吾さんは、ひどく不機嫌だった。

こんなに早く着いたのは、龍神の通り道だという龍道を通って来たからだ。


「どうなっている、悟? 電話じゃさっぱり話が分からなかったぞ」

わたしでもビビりそうなくらい厳しい声。


「そうだろ? 電話じゃ埒が明かないから呼び出したんだよ」

悟くんは飄々と切り返す。


「志鶴」

圭吾さんが苛立ったようにわたしを呼ぶ。

「はいっ!」

勢いよく返事をしたものの、美幸にピッタリとくっついたままのわたしを見て、圭吾さんは顔をしかめた。


「おいで、志鶴」

口調が和らいだ。

「こちらへ。君が無事かどうかを確かめさせてくれ」


わたしはおずおずと圭吾さんの前まで行った。


「怖がらないで」

圭吾さんはわたしの頬に触れてそう言った。

「君に怒っているわけじゃない」


じゃあ誰に怒っているの?

それとも、何に、かな?


わたしはゆっくりと圭吾さんに身を寄せた。

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