龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「そんなんじゃ、わたし気軽にお料理できない」

ブツブツ言うと、

「する必要はないでしょう?」

彩名さんが言った。


「彩名様は少しばかり練習された方がようございますよ」

和子さんが皮肉っぽく言った。


「わたしはお料理の才能がないのよ」

彩名さんは苦笑した。

「でも、圭吾のお嫁さんが志鶴ちゃんだから、わたしもずっとこの家にいられるわけだし」


和子さんは、やれやれと頭を振った。


「わたしがいた方がいいのよ、ばあや。どうせ圭吾のことだから、この家でずっと暮らせる事とか、わたしや従兄弟たちがいる事をちらつかせて志鶴ちゃんにプロポーズしたはずよ」


その通りだわ


「あの子は自分に自信がないのよ」

彩名さんは優しいけれど、少し悲しげな顔をした。

「だからいつも、志鶴ちゃんが喜びそうなものを取り揃えて完全武装しているの。でも、それでもまだ不安。本当に難しい子だわ」


いつも、わたしがものを欲しがらないと嫌な顔をするのはそのせい?

何でわたしをつなぎ止めればいいのか分からないから?

わたしは、圭吾さんさえ側にいてくれればそれでいいのよ

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