龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
ああ、落ち込みそう

こんなくらいで、いっぱいいっぱいだなんて


「女の子は驚くのが好きだと思ったけど」

それ、誰情報?

「意外性のない彼氏の方がお好みかい? つまらなくない?」


「本当の圭吾さんはどれ?」

わたしは慎重に尋ねた。


「今、君を味見した僕――たぶんね。割と衝動的な方だよ」

「じゃあ、その圭吾さんがいいわ」

「あれだけビビったのに?」

「うん」


圭吾さんは、ちょっと躊躇ってから

「君の望みを教えて。理想の彼氏になるよう努力するよ」

と、言った。


「わたしの理想は知っているんじゃないの?」

「君の心の中を見てもよく分からないんだ」


思わず笑ってしまった。


「そうね、だってそもそも理想の彼氏像なんてないんだもの。彼氏がほしいと思ったこともない――圭吾さんは別よ。ずっと一緒にいてほしい」

わたしは圭吾さんの胸に頬を寄せた。

「何も作らないで。本当の圭吾さんのままでいいわ。大好きよ」

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