龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「僕はどうかしている」


圭吾さんの声がくぐもって聞こえる。


「そうね。わたしなら、可愛く『キャッ』って悲鳴をあげるような女の子を好きになるわ」

「悲鳴をあげたよ」

「変な叫び声ならあげたわ」


圭吾さんは顔を伏せたまま、ククッと笑った。


「それでも僕は君が好きだよ。何だか甘くていい匂いもするし」


「髪に匂いついちゃったかなぁ。シャワー貸して」


「このままでいいのに」

圭吾さんはわたしの首筋に鼻をすりつけた。

「肌も甘い匂いがする」


えっ? ちょっと待って!


壁に押し付けられたまま、ゆっくりと首筋にキスされた。

食べられたって言ってもいいくらい。

脚がガクガクする。

小さく短い悲鳴が、口からこぼれた。


「ゴメン」

圭吾さんは顔を上げた。

「嫌かい?」


「嫌じゃないけど……ついていくのが大変なの」

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