龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
熱めのシャワーが気持ちいい。

シャンプーを手にした時、あれ?って思った。

いつも普通に使っているけれど、女性用のシャンプーとコンディショナー――これって、わたしのために用意してあるんだよね?

この部屋に出入りするようになった頃は、どうだったろう?

龍のいる裏庭に行きたいのが先に立って、この部屋をあまり意識した事はない。


でも、今よりもっと殺風景じゃなかった?


闘龍の訓練の後、圭吾さんがアイスクリームを出してくれるようになって、『テレビを自由に見ていいよ』と言われ、わたしが前から欲しかったゲーム機を見つけて――

どこからどこまでが、わたしのために用意された物なのか分からない。


「困った人」


ねえ、圭吾さん

分かっている?


わたしが嬉しかったのは物じゃなくて、

アイスクリームを分け合うあなたがいたこと。

テレビを見て笑いあえるあなたがいたこと。

ずっとやりたかった二人用のゲームを、一緒にしてくれるあなたがいたこと。


愛してるわ


どうか、わたしのこの思いが真っ直ぐにあなたの心に届きますように。

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