龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】

「ねえ、志鶴。起きて」

なぁに? わたし眠いの

「学校、休むの? それとも送って行く?」

えっ、何? もうそんな時間?


「今、何時?」

わたしはベッドの上に起き上がった。


「六時十五分」

圭吾さんはもう、ちゃんと服を着ている。


「もっと早く起こしてくれればいいのに」

「疲れてるみたいだったから。学校には間に合うだろ?」

「学校にはね。でも和子さんはそうはいかないの」


平日はいつも六時半には朝食を用意される。

もちろんパジャマで食べる訳にはいかない。

クローゼットに飛び込んでバタバタ着替えるわたしを、圭吾さんは面白そうに眺めた。


「規則って訳じゃないんだから」

「ダメよ。わたしは圭吾さんの奥さんになるんだから」


ベッドの端に座ってタイツと格闘していると、圭吾さんが目の前に座った。

「貸して」

圭吾さんは器用にタイツをクシュクシュにして、わたしの爪先にあてた。

「急がば回れって言葉、知ってる?」

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