【短編集】君に届いてほしいから─冬─
…「あの、これっ!」
細長い指が綺麗にラッピングされた袋を差し出す。
そっか、今日は……
「バレンタイン、本命なんだけど、受け取って下さいっ!」
「え?…あー…っと…、ありがと。」
まっすぐ手を伸ばしてそっと受け取る。
不思議と前みたいな嫌悪感がなくて。
素直に嬉しいんだよね。
「…気持ち応えられないけど、受け取った。ありがとう。」
こんなに俺が変わったのも…なんて考えるのはやめた。
チョコをくれたこの人の笑顔がこれでいいんだって教えてくれたみたいだしさ。