君とこんぺいとう
2人だけの歓迎会
次の日、自分の心を奮い立たせて会社に行った私は
みんなが出社するころには完全に仕事モードだった。

「小川、昨日歓迎会に来られなくて残念だったな」

向かいのデスクの田代くんは会社に来るなりそう言った。

「楽しかったんだぞ。
途中からでも来ればよかったのに」

田代くんは同期のよしみか
私に普通に接してくれる。

「仕事終わったの遅かったから」

私がそう言うと、松田さんが会話に割り込んできた。

「そう言えば何時まで会社にいたんですか?
里中さんも会社に戻ったみたいですけど
会いませんでした?」

私は思い出したくないことを思い出し
動揺したが平静を装った。

「さあ…」

会話を終わらせたくて視線をパソコンに戻す。

松田さんは敏感にそれを察知して
肩をすくめて自席に戻った。

田代くんはそれでも構わず、話を続けた。

「小川って里中と同級生なんだな」

私は田代くんに目を向けた。

「里中が歓迎会で言ってた。
すごいよな、同級生と会社で再会って」

田代くんは何か聞きたそうに私をジッと見ていた。

「田代くん、私忙しいんだけど」

田代くんは気を悪くするでもなく
軽く笑って言った。

「分かった分かった。もう邪魔しないよ」


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