君とこんぺいとう
「そうか。田代は萌のことが好きだったもんな」

「え?」

隼人は少し笑って言った。

「やっぱり気づいてなかったんだ。
俺も花火大会に行った時に気づいたんだけどさ。
あいつは萌しか見てなかった」

「気づかなかった。だって、私は…」

隼人しか見てなかったから、思わずそう言いかけて
言葉をのみこむ。

「萌は鈍感だからな」

いたずらっぽく笑って隼人は私を見た。

「そんなに鈍感じゃないよ」

私は「鈍感」と言われて頬を膨らませた。

「だって俺の気持ちにも
なかなか気づかなかったろ?」

「隼人だって
私の気持ちに気づかなかったじゃない」

私が軽くにらむと隼人は肩をすくめた。

「俺は萌のことが好きすぎて
気づく余裕がなかっただけだ。鈍感じゃない」

軽く言われた言葉に心が揺さぶられた。

(私のことが好きすぎて…って
そんなこと言わないでよ。忘れられなくなる)

急に黙りこんだ私を見て
隼人は私が怒ったと勘違いしたらしい。

「悪い、怒るなよ。
もう鈍感なんて言わないから」

それでも何も言わない私に
隼人は少し焦ったようだ。

「萌、本当にごめん。怒らないでくれよ」

久しぶりに見た焦った隼人に少し意地悪をしたくて
私は顔をそむけたまま言った。

「じゃあ、何かおごってくれたら許してあげる」

子供みたいに言った私がおかしかったのか
隼人は軽く笑って言った。

「何でもおごってやるよ」

私たちはお互いを見て笑い合った。
昔付き合っていたころに戻ったような気がした。


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