君とこんぺいとう
病院へ着くと私たちは茜さんの病室に向かった。

「萌さん、突然呼び出してごめんなさい」

ベッドの上の茜さんは私を見てにっこりと微笑んだ。

「いえ、大丈夫です」

茜さんは私に椅子をすすめると隼人に言った。

「隼人、萌さんと話があるから2人にして。
話が終わったら呼ぶから」

「分かった」

隼人はそう言うと病室を出て行った。

茜さんと2人だけになった空間は居心地が悪かった。

隼人と別れてほしいと彼女に頼まれたあの日を
私に思い出させるからだ。

「私、手術することになったの」

茜さんはそう切り出した。

「隼人から聞きました。よかったですね」

「ありがとう、隼人も喜んでくれたわ」

茜さんはうれしそうに言った。

「手術をすれば、私は
普通の生活が送れるようになるかもしれない」

普通の生活。

それは彼女が何よりも憧れていたものだ。

「普通の体になれたら、私、隼人にプロポーズするわ」

思わず目を丸くした私を見て、茜さんは言った。

「いま隼人が私のそばにいるのは、私の体を気遣ってるから。
それは分かってるの」

黙ったままの私に茜さんは続けた。

「でも私は隼人が好き。
元気になったら、病気だからという理由じゃなくて
ちゃんと私を好きになってそばにいてほしい」

茜さんは私を見た。

「萌さんは今でも隼人のことが好きでしょ?」

「それは…」

答えられない私を見据えて茜さんは言った。

「でも隼人はあなたには返さないわ。だから諦めて」

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