君とこんぺいとう
花火大会
季節は夏になった。
暑すぎると動けなくなる私には苦手な季節だ。

「私、夏って大好きなんです。
花火大会とかお祭りとかイベントが目白押しですし」

昼休みのフロアに松田さんの声が響く。

「里中さんは花火大会とか行きます?」

里中は書類から目を上げると考え込んでいた。

「そういえば、最近は行ってないな」

「花火大会、楽しいですよ!
一緒に行きましょうよ」

私は聞こえない振りをしつつも
なぜか2人の会話が耳に入り、イライラしていた。

「花火大会、いいね~。
俺も行きたいなぁ。小川も行かない?」

突然田代くんに話を振られ
私は会話を聞いていなかったふりをした。

「何?」

「だから、花火大会だってば。
お前も仕事ばっかりしてないで
ちょとは夏を楽しんだほうがいいぞ」

田代くんは私から書類を取り上げると言った。

「返してよ。忙しいんだからっ」

「花火大会、一緒に行くなら返してやる」

「…田代くん…私、キレるよ」

イライラが最高潮に達した私は
田代くんをにらみつけた。

「小川さん、怖い~。
田代さん、邪魔しないほうがいいですよ。
里中さんもそう思いますよね?」

松田さんは里中にまとわりつく。

「大勢で行ったほうが楽しいし。
小川、4人で花火大会行こうよ」

里中は思いがけず、そう言った。

「決まり!
そういえば、今日横浜で花火大会あるぞ。
グッドタイミング!」

私の返事も聞かずに勝手に話をまとめる田代くん。

「ちょっと…私、行くなんて一言も…」

「4人じゃないなら、俺も行かない」

里中がそう言うと、焦った松田さんが私を見た。

「小川さん~、行きましょうよっ。
4人で行けば楽しいですし!」

(里中と行きたいだけでしょ…)

私は彼女の変わり身の早さに内心ツッコミを入れた。

「お願いだから
行くって言ってください。
じゃないと私恨みますっ」

そう言った松田さんの目があまりに怖くて
私は断れなかった。

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