君とこんぺいとう
文化祭の思い出
里中と同じクラスだったのは
高校1年の時だ。
今になって思えばその1年が
高校生活で一番キラキラしていた時間だったと思う。

理系の科目に強かった里中は
私によく数学や物理を教えてくれた。
100%文系の私は、申し訳ないくらいに彼のお世話になり
赤点を免れたのはほとんど里中のおかげだった。

誰とでも仲良くなれる彼は
特に目立つわけではないが
クラスの皆から慕われていたと思う。

人見知りの激しい私は
そんな里中がうらやましくもあり内心あこがれていた。

彼と仲良くなったのは文化祭だった。
文化祭に力を入れるうちの高校は
10月の文化祭に向けて学校全体が
お祭り騒ぎになる。

うちのクラスもお化け屋敷をやることになり、
教室内を迷路のようにして
各所にお化けが出没するように
仕掛けを作ることになった。

クラスメートの大半は部活の出し物の準備で忙しく
部活に属していない、いわゆる「帰宅部」の生徒が
お化け屋敷の準備に追われていた。

学校から家が遠い私も帰宅部で
やることといったらクラスの出し物の準備だけだった。

そんなある日「塾がある」などを口実に
帰宅部のメンバーが帰ってしまい
私は一人で作業することになってしまった。

「あれ、小川一人でやってんの?」

声をかけてきたのは部活の途中で
教室に忘れ物を取りに来た里中だった。

「あ、うん…。
みんな今日は用事があるみたいで
帰っちゃったから」

里中は「ふーん」と言うと部活に戻っていったが
すぐに教室に帰ってきた。

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