君とこんぺいとう
その日はなぜか仕事もはかどらなかった。

同級生との再会に動揺した私は
外出から戻った彼の姿が目に入るたび
思考が中断された。

(しっかりしなきゃ。今日中に
終わらせなきゃいけない仕事なのに…)

私は気を引き締めて
一心不乱にキーボードをたたいた。

「小川さん、今夜里中さんの
歓迎会やりますけど行きます?」

そう声をかけられたのは
終業時間の直前だった。

「仕事が終わらないから、私は…」

私はそう言うと
後輩の松田さんは言った。

「ですよね。小川さんは
行かないかなと思ったんですけど
一応声かけてみたんです」

私は後輩の言葉に少し傷つきながらも
お礼を言った。

最近は飲み会にも行かない私は
歓迎会にも参加しないと思われていたようだ。

「俺の歓迎会なのに小川来ないのか?
せっかくの再会なのに」

里中がそう言うと
後輩の松田さんは言った。

「里中さんは小川さんと知り合いなんですか?」

「俺たち同級生なんだ。
俺が引っ越したから高1の時だけだったけど。
小川、本当に来ないのか?」

里中に聞かれて
私はうつむきながら返事をした。

「今日中にやらなきゃいけない仕事があって」

「そうか。仕方ないな」

しぶしぶ納得する里中の腕を引っ張るように松田さんが言った。

「里中さん。みんな待ってますよ。
小川さんは忙しいんだから
邪魔しないで早く行きましょ!」

「ああ、分かった。
じゃ、小川また明日」

里中はそう言って皆と帰っていった。

一人残された私は小さく息をつくと
またパソコンに向かった。

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