君とこんぺいとう
「取っておいてくれたんだ」

私は里中の隣に座ると、机の上にビンを置いた。

「かわいいから…
食べるのがもったいなかったし」

本当はかわいいからだけじゃない。
里中にもらったものを取っておきたかった。

「里中がくれたものだから…」

里中はそう言う私を見つめると
髪を優しくなでた。

「俺さ、いま中学生みたいにドキドキしてる…」

私の鼓動も一層速くなる。

「うれしいよ、ありがとう」

里中は私の頬を両手で包むと、唇をそっと重ねた。

私は温かく優しい感触に幸せな気持ちになった。

里中の唇が離れると、私は彼を見上げた。

「萌、好きだ」

初めて名前で呼ばれたことがうれしくて
なぜだか泣きそうになる。

里中は私を見て微笑んだ。

「何で泣きそうなんだ?」

「だって…」

「萌も、下の名前で呼んで」

見つめられて息をするのもやっとだった私は
ようやく一言つぶやいた。

「…隼人」

里中は今度は少し深く私に口づけた。

彼を受け入れるように私は背中にそっと手を回した。

あまりの心地よさと安心感に体の力が抜けそうになったとき
携帯がメールの着信を告げた。

私は急に現実に引き戻され、びくっとして里中から離れた。

「ごめん…俺のだ」

里中はそう言うと私を離して
テーブルの上に置いた携帯を手に取った。

「萌、今度高校のときの同級会やるみたいだよ。
篠崎からのメールだった」

「篠崎くんから?」

里中は携帯のメールを私に見せてくれた。

「萌には来てない?」

私はバッグの奥底に入り込んだ携帯を見た。

「あ、来てたみたい」

篠崎くんは高校1年のときに同じクラスで
学級委員長をやっていた子だ。

「一緒に行こう。萌、卒業してから
同級会行ってないだろ?」

里中は私を見ると微笑んだ。

「みんながどんなふうに変わったか
見るのも面白いよ」

「そうかな…
里中が行くなら行ってもいいかな…」

私がそう言うと彼はいたずらっ子のような目で私も見た。

「隼人、だろ?」

「あ…ごめん。つい…」

「会社以外では名前で呼ぶこと」

里中、じゃなくて隼人はそう言うと私の頬を優しくなでる。

「俺、そろそろ帰るよ」

「え、もう?」

「これ以上いると
もっと何かしたくなりそうだから」

隼人の言葉に私は思わず赤くなった。

「萌、また今度な」

隼人はそう言うと玄関先で私に軽くキスをした。


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