君とこんぺいとう
「茜が言ったんだ。一度でいいからキスしてほしい。
一度だけキスしてくれたら、その思い出で頑張れるからって」

「そう…」

「それで断れなかった」

そう言うと隼人は黙った。

私は茜さんの必死さを感じた。
私を呼び出して、キスシーンまで見せたのは
隼人を私に奪われたくないから。
そこまでしなくてはいけないくらいに彼女は必死だ。

「茜さんは…本当に隼人が好きなんだね」

隼人は私を見つめた。

「俺はその気持ちには答えられない。
俺が好きなのは萌だけだから」

「でもね…隼人」

私は意を決して言った。

「隼人は茜さんのこと心配でしょ?」

「萌…」

「そばにいて支えてあげたいはずだよ。
隼人は今の茜さんの手を離せるような人じゃない」

私が何を言おうとしているのか
隼人には想像もつかないはず。


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