極上お姫様生活―2―【完】
橘君がつまらなさそうにあたしから目を逸らして、重い息を吐き出す。
「ま、いーんじゃねーの?それが蒼空の答えなら仕方ねぇだろ」
みんながあたしに向けた視線は、冷たく残酷な色を宿していて。
見たことのない表情に背筋が凍りつく。嫌われたんだって、一瞬で分かった。
違う。違うよ。あたしはただ、話を聞こうと思っただけなのに。
「みなさ―――」
「別にもう弁解とかいらないから。その行動が全て、でしょ?」
貫かれるような鋭い目付き。乾いた笑みを浮かべながら、遥登君が一歩距離を置く。
「残念だが、こうなっては仕方ない。……もう、お前には近付かない」
櫻田君の表情はいつもと変わらなかったけど、その声はあからさまに冷たいものだった。
言い訳もさせてくれない。すごく近かったはずの距離が、いとも簡単に遠くなる。
もう、いくら手を伸ばしても届きっこない―――遠い遠いところまで、みんなが行ってしまった気がした。
唇を噛んで涙を堪える。追わなきゃ、みんな行ってしまう。
「んだよお前ら。ついさっきまで蒼空が好きみたいなことぬかしてたくせに、手のひら返すのはえーな」
「黙れ。……おい、もう帰ろうぜ」
あたしに背を向けたみんなは一度も振り返ることなく、歩き出す。