屋上で
――…私、解放されたんだ。
岡野さんの去っていく背中を眺めながらふと気づく。
頭にこびりついて離れない彼女達の声。
『波里さん、土でできたお団子あげる。美味しいわよー』
『髪長くてうざいでしょ?ハサミ貸してあげるから切りなさい?
できないなら私が切ってあげるわ』
『ごめんなさい、手がすべって泥水がかかっちゃった。
…どうせ家に帰るだけだし、雨降ってるからついでに濡れて帰れば?』
「おい、そんなに泣くほど俺とのキスが嫌だったのか?」
はっと、意識を戻すと鈴木が私の顔を不安げに見ていた。
「――え?私、泣いてる?」
確認すると頬が濡れていた。
そして次の瞬間。
私の中の何かが切れた。
私は人目も気にせず大声で泣いてしまった。
すると、私の身体を温かいものが包み込んでくれた。