屋上で


それから彼女は教室でも本を読んでおり、周りには見向きもしていなかった。


そう言えば、いつも俺が教室で見かける波里は常に読書をしていた気がする。




そんな事をふと思った。



そして月が変わって席替えになり、たまたま彼女の席の近くになった。俺の席の場所は、ちょうど彼女の前。



だから、ほんの気まぐれだった。

気まぐれに彼女に語りかけただけだった。






「その本、面白いか?」





最初は俺に話しかけられた事に気付かない様子だったが、もう1度優しく名前を呼び、質問すると彼女は驚いたように本から顔を上げ、そして。





「うん、この本大好きなの」





とあまりに嬉しそうに笑うから。

何だか俺もつられて嬉しくなってしまい、そうかとあまりに素っ気ないけれど精一杯の返事を返した。


どうやら彼女はこの本の作者が好きなようで、恋愛小説だけでなくエッセイやミステリーも書いていると話してくれた。
そして先日買ったその本は雑誌から追いかけていたのだと教えてくれた。

いつもなら、適当に女子の会話を聞き流す俺が珍しく彼女と話す事が心地よかった。



そして、自分の胸に広がる微かな違和感。



いつもと同じ帰り道。


俺は今までにない高揚感を覚え、ふと気づいた。




俺、彼女が好きなんだ。







コレは、俺が本を書く事を決意する1ヶ月前のお話である。






―こぼれ話・終―
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