年下のカノジョ~あの子は高校生~
「―――っおい。三山!」
 
 突然名前を呼ばれた。


「・・・・・・へ?」
 我ながら間抜けな返事をして、水田を見る。

「へ?じゃないよ。
 お前も挨拶しろよ」
 水田が俺のわき腹をひじでつつく。


「えっ!?
 あっ、ああっ」

 知らず知らずのうちに、俺は柏木さんに目を奪われていたらしい。



「え、えと、チーフコックの三山です!
 27歳です!
 紅茶が大好きです!
 独身です!
 一人暮らししてます!
 現在、彼女はいません!」


 ・・・・・・勢いあまって余計な個人情報まで紹介してしまった。



 柏木さんはきょとんと俺を見上げ、水田と山岸さん、それに洗い場で鍋を磨いていた赤川が一斉に噴き出した。


「変な三山さん」
 山岸さんは笑いをこらえようと、口元を押さえている。

「お前、何言ってんだよ」
 半笑いの水田。

 赤川の奴も必死で笑いをこらえているみたいだが、肩が揺れているのがここからでも見て取れる。



「い、いや・・・・・・。
 なんか、つい」
 俺は顔を赤くして、頭をかいた。

 恥ずかしくて、顔から火が出そうだ。



 そんな俺に柏木さんは 
「私が緊張していたから、場を和ませようとしたんですよね?」
 と、言ってくれた。
 
 山岸さんの墨付きの笑顔を添えて。

 母親が我が子に向けるような穏やかな表情は、本当に魅力的だった。


「あ・・・・・・。
 いや、まぁね」



 こんな年下の子にフォローされるなんて、俺って情けない。
 

 照れ隠しに再び頭をかいた。
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