年下のカノジョ~あの子は高校生~
「三山さんの“うっかりミス様々”ですね」
 大分落ち着いたようで、顔に赤みが差している。

 さっきまでは倒れるんじゃないかってくらい、顔が青ざめていた。



「はははっ。
 このことは店長やオーナーには内緒だよ」
 俺は唇に立てた人差し指を当てて、ひそひそと話す。


「はい、2人だけの秘密ですね」
 柏木さんもひそひそと返してくる。



 彼女が何気なく言った『2人だけ』というセリフに、俺はドキッとした。

「う、うん、秘密ね。
 じゃ、気をつけて」
 
 柏木さんに手を振って、見送った。




 徐々に遠ざかってゆく柏木さんの背中。
 
 振っていた手を止めてゆっくり下ろす。



 だけど。


 足はその場から動かず、俺は遠くなった彼女の背中を見つめていた。







 通用口の鍵を開け、中に入る。

 事務所に行って、忘れていた発注を済まし、椅子に座り込んだ。



 気持ちが少し落ち着いたので、さっきの場面を思い返してみる。


 柏木さんが乱暴されるのが許せなかった、と感じたことは覚えている。



 ただ。

 どうして抱きしめてしまったのかは、冷静になった今でもやはり分からない。



 女性が襲われていたら、助けるのが当然だ。


 あの場にいたのが柏木さんでなくても、俺は助けに入っただろう。
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