【短編】こんなものいらない
「あ、まあ…」
「ふふ、やっぱり」
「な…なんですか?」
口に手をあてて笑う店員。
良く意味がわからなくて、聞き返した。
「速水君、今、中で同僚達にすごいいじられてますよ。彼女だろーって」
店員は再び手を口にあてて笑う。
「あ…、はは」
何故か恥ずかしくなって、顔が火照った。
手の甲を顔に当てると、いつもの何倍も熱い。
「彼女さんかわいいですね」
「や、いや…。何言ってるんですか」
お世辞を言われて、しどろもどろになるあたし。
だってどう見たってこの人のほうが可愛い。
2つに結んで、軽く巻かれた茶色い髪。
つけまつげ、ばっちり化粧。
白い肌と、そのスタイル。
それに比べてあたしは化粧だってあまりしていない。
というか、今日はちょっとした用事のつもりで家を出たから。
髪も茶色いけれど、ブラシで梳いてきたくらいだ。
お世辞も、この人が言うと嫌味になるんじゃないだろうかなんて考える。