【短編】こんなものいらない
「う…、うん!」

「じゃな」

 
顔を力強くあげて、慶太を見る。

慶太はもう1度笑って、あたしの頭に手を置いて、少し撫でた。

 
 
鼓動が急速に速まる。

心臓の音が、自分の耳に届く程動く。

すごく、すごく嬉しい。

今まで崩れかけていたものが、次々に積み直されていくみたいだった。

冷め切った関係ではなくて、あの頃の、付き合い始めた当初のような気持ち。

 
 
顔に力を入れていないと緩んでしまいそうで、下唇を噛んだ。

 
 
「…ふふ」


それでも、口から声が漏れる。


 
「コーヒーになります」

 
と、さっきからさほど時間はたっていないのに、女の店員がコーヒーをテーブルに置いた。

コーヒーなんだし早いのは当たり前か、と思って「どうも」とお礼を言う。

 
 
「あの、速水くんの彼女さんなんですか?」

「え?」

 
速水というのは、慶太の苗字だ。

それを言われ、思わず顔を店員のほうに向ける。

 
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