【短編】こんなものいらない
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夜9時頃、ケーキも食べ終えて、コーヒーも何度かおかわりした。
さすがにちょっと暇だな、なんて思っていると、奥のほうから慶太の声がする。
「お先でーす」
そう言って雌伏に着替えた慶太は出てきた。
あたしは自分の席から慶太に軽く手を振る。
それに気づいた慶太も、笑顔で返してくれた。
「ごめんな待たせて」
「んーん、平気だよ」
「じゃ、帰るか」
そう言って慶太は机の上の伝票を持ってレジへ向かった。
あたしがお財布を出そうとすると、慶太は「良いよ」と言って自分の財布を出す。
「あ…大丈夫だよ」
「こんくらい出させてよ。俺彼氏なんだし」
「慶太…」
こんなに幸せなことがあって良いのかと思うくらい、慶太が優しい。
というか、普通なことなのに、暫く冷めた関係が続いていたから些細なことでも喜べる。