【短編】こんなものいらない

***

 
 
夜9時頃、ケーキも食べ終えて、コーヒーも何度かおかわりした。

 
さすがにちょっと暇だな、なんて思っていると、奥のほうから慶太の声がする。


「お先でーす」

 
そう言って雌伏に着替えた慶太は出てきた。

あたしは自分の席から慶太に軽く手を振る。

それに気づいた慶太も、笑顔で返してくれた。
 
 
 
「ごめんな待たせて」

「んーん、平気だよ」

「じゃ、帰るか」

 

そう言って慶太は机の上の伝票を持ってレジへ向かった。

あたしがお財布を出そうとすると、慶太は「良いよ」と言って自分の財布を出す。


「あ…大丈夫だよ」

「こんくらい出させてよ。俺彼氏なんだし」

「慶太…」

 
こんなに幸せなことがあって良いのかと思うくらい、慶太が優しい。

というか、普通なことなのに、暫く冷めた関係が続いていたから些細なことでも喜べる。 
 
 
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