【短編】こんなものいらない
慶太はずっとあたしを見る。
距離もそのままで、次第に息をするのも止めていた。
10数秒後、慶太はすっとあたしから離れ、運転席にもたれ掛かる。
そして肩を揺らしてため息を1つついた。
「え…どうしたの?」
「や、なんでも」
ため息をつかれたら、誰だって気になる。
あたしがそう言うと、慶太は目線だけ動かしてあたしを見た。
「言ってよ」
「んーと」
「あたし何かしたならごめん」
「違う違う。…いや、ある意味そうかも」
焦らす様にまわりくどく話す慶太。
なんなの?
だんだん怒りがこみあげてきて、なげやりな気持ちになる。
「…もう良い」
「里奈?」
慶太があたしの名前を呼ぶけれど、あたしはそれを聞き流す。
何も言わない。