【短編】こんなものいらない
辺りはもう暗い。
車内も明かりは付いていなくて、暗がりにいつにない慶太の真剣な表情が見えた。
「どうしたの?」
あたしがそう尋ねると、慶太はシートベルトを外し、あたしと向かい合う様に身を乗り出してあたしに近づく。
「俺、お前が好きだよ」
「え…?いきなりなに…」
「愛してる」
そう言って顔を近づけて、慶太の唇とあたしのそれが重なる。
いきなりの事で驚いたけれど、慶太はそのまま動かないからあたしも目を瞑った。
長めのキス。
濃厚でもなんでもない、いつもしていた普通のキス。
それなのに、何故か今までの中で1番緊張して、胸の鼓動が激しかった。
しばらくして慶太の唇が離れる。
それでも顔はあたしの至近距離にあって、お互いの息がかかる。