いっしょに☆鬼退治に行きませんか?
ふて腐れて碓河の姿を見ていた私は気づかなかった。

一人二人と近づく影。


「…あぁ!桃太郎様だ」

「ホントに桃太郎様が来てくれたのね」

「勇者桃太郎様だぞ!これで平和が戻る」

気がつくと、私はいつの間にか人々に囲まれていた。

老若男女、先程まで銅像の下から私を見ていた人達だった。
みんな、縋るような目で見つめてきて手を合わせ祈っている人までもいる。

「っ!…」

どうしていいかわからず、オロオロしていると人々の輪を割って近寄ってくる人物がいた。

「慌てんなよ。まだコイツが桃太郎って決まった訳じゃないんだ」

騒ぎに気付いたのか、碓河が戻ってきた。

「トロイからこんなことになるんだ。行くぞ」

!!

小声でそう言うなり、いきなり私の手を掴み歩き出した。

「悪いな。ちょっと、どいてくれ」

唖然としたまま、私は引っ張られるように人々の輪から抜け出した。

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