今までの自分にサヨナラを


「ありがとう、さゆ!」


一瞬で彼の顔に笑顔という名の花が咲く。


声は明るく弾み、元気な子供のようで彼らしい。


でも、そんな真っ直ぐな無邪気さが時に私を困らせてもいるのだ。


「じゃあ、ほら呼んで呼んで~」


おいでとでも言うように、手を広げる彼に私はため息を吐きたくなる。


そんなことをされたら、もっと呼びにくいのに……。


落ち着かない心があらわれるように爪先がもじもじと動いて、熱が出たみたいに顔が熱くなる。


顔から火が出るというけれど、まさにこういうことだろう。


彼といる時の自分はどこまでも面倒だ――。



< 181 / 326 >

この作品をシェア

pagetop