今までの自分にサヨナラを
「ありがとう、さゆ!」
一瞬で彼の顔に笑顔という名の花が咲く。
声は明るく弾み、元気な子供のようで彼らしい。
でも、そんな真っ直ぐな無邪気さが時に私を困らせてもいるのだ。
「じゃあ、ほら呼んで呼んで~」
おいでとでも言うように、手を広げる彼に私はため息を吐きたくなる。
そんなことをされたら、もっと呼びにくいのに……。
落ち着かない心があらわれるように爪先がもじもじと動いて、熱が出たみたいに顔が熱くなる。
顔から火が出るというけれど、まさにこういうことだろう。
彼といる時の自分はどこまでも面倒だ――。