今までの自分にサヨナラを
狭くなった胸の奥から、一生懸命に三つの大切な音を紡ぎ出す。
私は勇気を振り絞るように全身に力をこめて、やっとのことで唇を動かした――。
「み、……みつ……る……」
途切れ途切れの不恰好すぎる音が、彼の名前となって宙を漂う。
心臓は自分の物じゃないみたいにうるさい音をたてて、彼の顔なんて絶対に見られない。
というよりも、今の私の顔はとても見せられない。
私はただひたすらに俯いて顔を隠していた。
「……やばい。超嬉しい――」
でも、聞こえてきたのは彼には似合わない抑え気味の呟き。
こっそりと気付かれないように盗み見れば、そっぽを向いてしまっていた。